えとらんぜ

えとらんぜVOL.2『じつは方向オンチなのです』
えとらんぜ
さっき、夜明けに帰宅した時のこと。マンションの廊下から、空を見ていて度胆を抜いた。
「た、太陽が…!」
北東から昇っているではないか。私の部屋は南向きだからということで契約したのだ。
私の部屋が南向きである以上、あり得ない方角から太陽は顔を出している。いくら日の出の方角が、冬で少しズレてるにしてもズレすぎだ。
「不吉だ。凶兆だ」
興奮してすっかり目が覚め、今しがた別れたばかりの友人に電話でそう言うと、
「太陽は東から昇って西に沈むの。アンタが今見た『太陽が昇って来た方角』が東なの」
 キッパリ。
「だってウチ南向きだよ」
「それ誰が言ったの」
「不動産屋」
「アンタは宇宙の法則より不動産屋を信じるわけ」
「……じゃつまり」
「つまりアンタんちは南向きじゃないってこと」
「うそだ」
「…お大事に。おやすみ」
うそだッ。
ウチが曲っていたうえ、さらに十年間気づかずにいたっていう驚愕の事実。
午後。往生際が悪いようだけど、念のため方位磁針を買いに行く。
そういえば、方位磁針なんて小学校の理科の時間に使ったくらいで、触るのも見るのもそれ以来だ。ちゃんとメモリもついてて、十二支も書いてある。二百円也。案外安い。針の先端には夜光塗料も塗布してあるし。あぁそうか、山で遭難して暗くなっても見えるようになってんだ。なるほど。…でも山で遭難した私が、もし方位磁針を持っていたとしても、東西南北どちらに道があるかなんてきっと分からない。それは困る。助かるには……そうか山に登らなきゃいいんだ。なんだ。
 一件落着。
 閑話休題。
さて、ブツブツ言ってるうちにウチ到着。おもむろに方位磁針で方角を確認すると、やっぱり北を指す針がズレている。正確には、私が北だと思っていた方角からかなり西方向にズレて、本来の北があるらしい。ということは…、ウチの窓は南西向きなわけだ。…で、今まで東だと思ってた所は東南…
「だからさっき日が昇ったのは北東で…ん?」
違う。日が昇ったんだから東だ。
恥ずかしい話だけど、私はこれを書いている最中も、分からなくなっている。そこで、去年のカレンダーの裏に、大きく方位を書き、その上にティッシュの箱を斜めに置いてみてやっと分かったんである。部屋がきちんと東西南北に、真直ぐ位置していないのって、なんかとっても違和感。こういうのって私だけなんだろうか。
違和感と言えば、私は京都の友人と電話する時は、つい北方向を意識してしまう。なぜなら京都に行く時は、まずウチを出て北の方へ向かって駅まで歩くから。
「ホントはあっち(西)なんだよな」
と思うと、すごい違和感。
また、慣れない街の店に入り、一回りして外へ出ると、
「私はどっちからきたんだろう…」
もう自分がどの方向から歩いて来たのか分からなくなっている。
あとドライブ帰りに、そこは右折だろうと思っているところで、左折されたりすることも多い。
こういうのを方向オンチというのだろうか。
あ~それにしても、なんか部屋が曲ってる気がする~。
 もー。
あ~それにしても、なんか部屋が曲ってる気がする~。 どうにかしろ不動産屋。
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