えとらんぜ

えとらんぜVOL.5『原価は幾らなんだ筋肉増強マシン』

えとらんぜ
 私は美容関連グッズに目がない。三度の飯より好きだ。

とは言うものの、実際に買うことはほとんどなく、たいがい広告の比較検討だけで満足している。  

今話題の筋肉増強マシン。 「十分で六百回の腹筋収縮運動が!」  

あの、外国人がおおげさに驚くCMは気になってしかたない。

 あのプールサイドの女性の不自然な腰のひねりは、つい真似たくなるが、今なんとかその衝動は抑えている。装着中、服の上からでも目立たないと言ってるそばから、むき出しで犬の散歩をするのはいかがなものか。  それにしても、一万円弱という価格は注目に値する。

 そもそも、あのテのマシンは、家庭用に改良されたタイプの物が、某通販雑誌で飛ぶように売れたのがブームのきっかけ。

価格が十五万円近くするにもかかわらず、大ヒットしたらしい。私も以前スポーツジムで試用した事がある。

体中に巻かれたベルトに、電極のようなものを付けられ、ビビッビビビッと電流が流れるのである。

フランケンシュタインにでもなった心地だった。その高価なものが家庭用に改良され、コードレスで動きまわれるようになったうえ、たった一万円で手に入るとなれば、買わない手はないなと、皆思ったに違いない。  

はい。買ってしまいました。

 注文が殺到していて到着に二週間以上かかるとのこと。

今や全国、プルプル揺れている肉だらけなんである。  

二週間後、一緒に購入した友人とおそるおそる腹部に装着し、スイッチを押す。 

 「おお」  一見ちゃちだが思いのほか強力だ。しかし、慣れない刺激がくすぐったくて笑いが止まらない。

笑い過ぎて腹筋が痛いほどだ。

 「…ひょっとして、笑って腹筋鍛えろってことか?」  

それでも、しばらくすると慣れてきて、今度は筋肉が勝手に動く様が面白く、注意書きには「最初は十分でやめとけ」とあったが、結局一時間も続けてしまった。翌日はひどい筋肉痛。

 こんなふうにして一ヶ月も経った頃、ふと立ち寄った薬局で発見してしまった。  

「今話題の筋肉増強マシンがナント5800円!」

 そればかりか、テレビショッピングでは、新参ものが次々と安価で出てくる始末。ひどいやつになると、  

「一箇所にしか使用出来なかった従来のものに比べ、今回ご紹介する商品はナント本体ふたつでこのお値段!」

 画面に映った「従来のもの」は、まさに私が購入したそれだった。

しかも私のマシンは、すでに通電性が落ちてきて、パッドが使い物にならなくなってきている。   

あまりの虚しさにうなだれていたところに、一本の電話が。

 「◯◯ショッピングですが、不具合はありませんか」  

なんてタイムリーなんだと思い、不具合を訴えたところ、

「では新しく改良したパッドと交換ということで…」

 また金とんのかよッと言いたかったが、そこはぐっとこらえ、不機嫌に「お幾ら?」と聞くと、

 「今回はサービスということで無料でお送りします」

 なんだそれなら最初からそう言ってよんアナタいい人ネ。ゲンキンなものだ。

 ところが、先日。買い物中の私の前に積み上げられていたそれは、我が家で見慣れた例の筋肉増強マシンであった。  

「爆安!人気のフィットネスマシン。3800円!」

 ドン・キホーテ店内で気絶しそうになったのは私だけではあるまい。  

一体ぜんたい、原価は幾らなんだよッ。


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