えとらんぜ

えとらんぜVOL.6『毛穴に泣くの巻き』

えとらんぜ ある日、自分の素顔を鏡でまじまじと眺めていて、ある部分が気になった。  毛穴である。以前より明らかに目立ってきている。

 

 毛穴の注目度は今や全国規模だ。薬局のメイク落としや洗顔料の多くには「毛穴のお掃除します」みたいなことが謳われ、毛穴専用パックや、汚れを吸い出す吸引器具までがズラリと並んでいる。今や全国毛穴縮小決起集会でもおっぱじめそうな勢いである。  さて、毛穴の中には皮脂や汚れだけでなく、認めたくはないが顔ダニなんかも棲んでいて、結構にぎやかだ。特に小鼻の脇辺りは、好物の皮脂が時間制限なく食べ放題なので、顔ダニさんたちに人気が高いらしい。

 

 近年、この顔ダニさんたちの存在はメディアによって明るみとなった。商店街を歩く若い女性をつかまえて、小鼻の皮脂を採取し、そこに蠢く顔ダニさんたちを、顕微鏡でわざわざ本人に見せて落ち込ませるという悪趣味極まりない番組もあった。  しかし、この顔ダニの恐怖は近頃ではあまり聞かれない。

 

 当然である。もともと人間の顔に皮脂がない時代などはなかったのだ。ただ、今までその存在を知らずにいたってだけで、古来から人は顔ダニと共存しており、ちゃんと洗顔していれば何ら問題はないはずだ。  それよりほっとけないのが、お掃除した後の毛穴である。汚れが取り去られても、ぽっかり口を開けた毛穴を放っておいたら、じきにまた汚れが溜まり、さらに広がってしまう。そこで今度は毛穴の引き締め効果のある化粧品にお呼びがかかるわけだ。

 

 パッケージの裏や広告には、いかにも「引き締めまっせ~」的な、聞き慣れない成分が列挙されている。ちなみに、前号で私は美容関連グッズに翻弄されたばかりだ。  ハイまたやっちまいました。

 

 さて、今回購入したのは、アメリカ製の高価な毛穴引き締め美溶液。やはり舌噛みそうな名前の成分が配合されている。容器がシンプルで薬っぽく「ダイジョーブヨ、アメリカ、セイギのクニね」といった感じ。  パッチテストで問題なかったので、次の晩から塗り始める。すると翌々日には毛穴が目立たなくなりスベスベに。

 

 「アメリカ最高。一生ついてく」  その晩も洗顔を終え、おもむろに塗り始める。すると間もなく、ちょっとした違和感が。一瞬ヒリッとしたのである。今思えばここで止めておくべきだったのだが、朝のスベスベ感に気をよくしている私は、気づかなかったことにして床についた。

 

 翌朝、鏡を見ると少し皮がむけている。ここで皮フ科へ行かない所が往生際の悪さ。大枚はたいた美溶液が失敗だったとは認めたくないんである。とりあえずオロナインを塗る(私は昔から何でもオロナインで治ると思っている)。そして今回もオロナインは救ってくれ…るはずだった。  明くる日、鏡を見て驚愕。

 

 「と、溶けている…!」  何がって、皮膚がである。薄皮が全体的にむけ、所々テカり、しかも赤い。これはヤケドの状態だ。お岩さん寸前の顔に、気が遠くなりながらも洗顔したのだが、少し口を開いただけで顔がつっぱる。

 

 結局皮フ科に駆け込んだ。「高かったんです~」と訴える私を、「あきらめなさい」と諭しながら先生がくれた薬はその名も、ブ、ブフェ、『ブフェキサマク軟膏』。舌噛みそうな名前に一瞬不安がよぎったが、コレは効いた。  「皮フ科最高一生ついてく」

 

 今、あの憎き美溶液の処遇をどうしたものかと思案中。捨てりゃいいんだけど、悔しくて捨てられないんである。  ぬぉーッ金返せーッ。


クラスクTOPページへ